父との思い出

5 8月 2011

大好きな父と

父との思い出が詰る

休日になれば一緒に料理や買い物、本屋巡り。パリへ旅行に行けば、二人でカフェのオープンテラスでくつろぐ、彩さんのエッセイを読むと、亡くなった父の登さんと、まるで恋人同士のように仲むつまじく過ごしていたことがよく分かる。登さんは建築家として第一線で活躍し、1998年に咽頭がんのため62歳で亡くなった。生活に密着した住宅の設計手法やエッセイは、いまだに人気がある。彩さんが中学生になったころ、登さんは、インテリアデザイナーだった妻と離婚。その後、彩さんは弟とともに母親のもとで暮らしていたが、15歳のときに父がー人で暮らしていた住まいに転がり込んだ。「思春期特有の母とぶつかる時期で、お父さんの所に行けば少しは甘やかしてくれるかな、という程度の気持ちでした」。

二人暮らしのスタート

そのときから彩さんが結婚するまでの10年間、父と娘の二人暮らしが続いた。当時二人が住んでいた家は、東京・渋谷区内のマンションの3階。同じマンションの1階と5階に登さんが主宰する設計率務所のオフィスがあり、2階にアトリエと称する登さん仕事部屋があった。彩さんは毎日、学校から帰ると、まず登さんのオフィスに顔を出した。登さんは、「出張土産のうまい一夜干しが冷蔵庫に入ってるから」「今日は遅くなるから夕食は先に食べ始めていて」といった一言を、必ず彩さんに投げかけた。打ち合わせ中であれば、手を上げて彩さんに合図した。仕事の問もいつも娘を気にかけている父の姿を、彩さんは毎日見ていた。